焔ノ宴 第一話 夢
『貴様っ…!俺を裏切るつもりかっ』
『裏切るも何も…私はもともとあなたなど慕っていませんでしたから…。』
『…!』
『さよなら……』
灯護は夢にうなされ、目を覚ました。
夢の中で、辺りは赤く燃え上がっていた…。
灯護はそんな夢をよく見ていた。
その夢の記憶は鮮明で、起きた後も感覚が残るほどだった。
「気持ち悪い夢だ…。」
灯護はぽつりと独り言を呟いて、ため息をついた。
「灯護さん…咲です。」
「咲か…。入れ……」
灯護は咳混じりに小さく呟いた。
灯護は昔から重い心臓病を患っていた。
だから、能の一族の宗家の子息に生まれながら跡を継ぐことは約束されていなかった。
咲と名乗った少年は、部屋に入った。
彼は、親の生活を楽にする為に自ら一ノ瀬家に身売りをした。
今はあまり自由に動けない灯護の身の回りの世話をしている。
「灯護さん…?顔色が良くないです…」
咲は心配そうに小さく呟くとそっと灯護に近づいた。
そして顔を覗き込み、自分の額と灯護の額をそっとくっつけた。
「少し熱いです…。」
「大丈夫だ…。心配いらない…。」
「でも……」
「大丈夫だと言ってるだろ…」
そう言った瞬間、ふわりと灯護は咲を押し倒した。
この二人…実はいつしか恋仲へと発展していたのだ…。
始めは身売りと主人。
今は恋人同士というわけだ。
「ぁ…」
「……先生でも来たか?」
「ぁ…はい…先程……」
いらっしゃいました、と咲が言い掛けた所で
部屋の戸がガラリと開けられた。
咲は慌てて灯護を起こし、身を起こした。
開けた主は、金色の髪に煙草を片手に持った男で、いかにも不良そうな感じ。
「やぁ、灯護君。元気かなー?」
「…あまり元気じゃないんで煙草は止めてください、先生。」
少し咳をしながら言う灯護を見て男はわざとらしく肩を揺らす。
「おや、元気じゃないのかい?」
「せ、先生…本当に煙草は…」
焦りを隠せないまま男に言った咲を見て男はクスッと笑った。
仕事を増やすような真似はしない、と。
先生と呼ばれたこの男…遠藤圭亮は、こう見えて有能な医者で医学の知識に長けた人物だ。
灯護の主治医でもある為、こうして定期的に一ノ瀬家を訪れている。
「あ………」
「ちょっと、圭亮。僕の灯護にもしものことがあったら殺すよ?」
咲が、小さく声を洩らしたのとほぼ同時。
突然現れた髪の長い綺麗な男は、真顔で危ない事をさらりと言って除けた。
「おぉ怖い。そんなに怒らないでよ、華鏡さん?」
華鏡と呼ばれた男はむすーっとして圭亮を睨んでいた。
その華鏡の様子を、瓜二つの男がクスクスと笑って見ていた。
「華鏡。それはいくらなんでもいいすぎですよ。せめて半殺しに…」
「鏡夜さん。」
灯護が二人の会話をぴしゃりと止め、ため息をついた。
咲は、ずっと視線を華鏡と鏡夜に行ったり来たりさせている。
瓜二つの顔をした二人の男、嵩宮華鏡、鏡夜は双子の兄弟だ。
性格は似ても似つかないのだが、どうもどちらも毒舌気味だ。
この双子、分家の跡取り息子だが、
今は灯護が病の為、人手の足りない本家で能を舞っている。
と、ふと灯護がまた口を開く。
「二人とも…先生と喧嘩は止めてもらえますか?気に食わないのは良くわかりますが…。」
「それはどういう意味かな?灯護君?」
さらりと言った灯護に、圭亮は突っ込んだ。
だが、灯護はまったく動じない。
「あの……」
咲は、水を注したような言い方だが、控えめな口調で呟いた。
視線の先には華鏡と鏡夜。
「どうしましたか?咲さん?」
「何さ、咲。」
冷たく見てくる華鏡と、妙に爽やかな笑みを見せてくる鏡夜。
色々な意味で二人とも怖いせいで咲は少し困り気味に呟いた。
「そろそろ診察とお薬の時間なんですけど…」
多少の沈黙の後、華鏡は荒々しく部屋を出た。
鏡夜は、華鏡が出ていったのを見て、頭をぺこりと下げてその場を後にした。
診察時は、衛生上医者と患者、それから説明を聞く者以外は出ることになっていた。
特に灯護は風邪でもすぐに拗れる為、こんなに人が部屋にいたこと自体が多少珍しかった。
また再び妙な沈黙が流れた。
*あとがき*
@山南
どもども〜始めましてこんにちは。イラスト担当しております山南ともうします。
いかがだったでしょうか?相模さんと萌トークで生まれた焔ですが、
皆様にも気に入っていただけると幸いです。
山南初の18禁なんで(笑)結構気合はいってます!ねっ相模さん!
これからどんどんドロドロになってゆきますが、見捨てないでやってくださいっ(笑)
それでは、またお会いいたしましょう!
@相模
どうも、こんにちは、小説担当相模です。
第一話、どうでしたでしょうか?
私は山南さんの美麗イラストだけを期待してここを開いていただきたかったです。(笑)
私のへっぽこ文章で山南さんが恥を書かないかだけが心配で。(笑)
まだまだ始まったばかりの焔ですが
ちょっと長めの話になりそうなんで、末永く付き合っていただければ幸いです。
まだまだ秘密など、色々多い灯護さんと咲さんですが
これからもよろしくお願い致します!!