焔ノ宴　第二話　病








「んー……少し熱があるねー。…最近多くない？調子悪いの？」
「…そんなの自分ではわかりませんよ。」
どんなに圭亮に言われても自分の体に無関心そうな灯護をそわそわと見ている咲がいた。
圭亮は横になる灯護を難しい顔をして診察していた。
「まぁ…今日の所は帰るけど…。また体調悪くなったらすぐ呼ばなきゃダメだよ？わかったね？」
「子供じゃないんですから…そんなに念を押さなくても大丈夫ですから…。」
圭亮は、まだ何となく無頓着な灯護を見て、ため息をつきながらも薬を渡し、
部屋を出ていこうと立ち上がった。
咲が深く礼をした時だった。
「咲ちゃん、ちょっといいかな？」
咲が顔を上げると、圭亮が真面目な表情で咲を見ていた。
圭亮が真面目な表情をするなんて何事かと思い、咲は微かにびくついた。
まさか灯護がどこか悪くなっているのでは…と。
咲はびくつきながらも部屋を出た圭亮に付き従い、部屋を出た。

「……灯護君…少し体調が悪いみたいだね。」
圭亮は小さく呟き、壁にもたれたまま煙草を吹かしている。
「最近、熱があったり…咳してたり…そんなことが多いし。
心臓が弱い分、人より熱に耐えれないしね。体調には気をつけないと…。」
ため息をついて言った圭亮は、咲に向き直り、煙草の火を消した。
「…灯護君の体調に、なるべく気を使ってあげて？」
「ぁ…はい…。」
咲は、少し安心したように微笑んだ。
心臓が悪くなっているわけじゃないんだ…と。
「何笑ってるの。」
くすくすと圭亮はあからさまにほっとした咲を笑いながら見た。
「…まあ、とりあえず帰るから。またね。」
圭亮は咲の頬にそっと手を伸ばし、そのまま親指を唇に滑らせる。
「やわらかいよね〜」
「せっ、先生…？」
赤面する咲を圭亮は楽しそうに見ていた。
「ふふ、冗談だよ。それじゃあね。」
軽く手を振り、立ち去る圭亮の姿が見えなくなるまで咲は深く礼をしていた。

「……何話したんだ？」
灯護は、咲が帰ってくるとぽそりと呟いた。
「ぁ…いえ。別に…。先生…灯護さんのこと…心配してらっしゃいましたよ…？」
「そうか……。」
「はい。ぁ…灯護さん。何か食べますか？」
えへへ、と笑った咲は、灯護を見つめていた。
「何か簡単なものなら作ってきますよ。」
「……いや、いい。」
「……灯護さん…？大丈夫ですか…？気分悪いですか？」
咲は心配そうに灯護を見るが、灯護は顔を逸らし、ため息をついた。
「いや……」
「とりあえず薬飲まないといけないですから…何か食べましょう？」
咲は、灯護ににこっと微笑みを向け、言った。
「あぁ…わかった……。」
「何がいいですかね？灯護さんは何が好きですか？」
咲は楽しそうに言った。
何となく元気のない灯護を元気づける為だろう。
灯護はそれでも無表情に受け答えするだけ。
「…好きなもの…か。別にないんだが…」
「えぇ？！そ、そんなぁ…」
咲はかなり焦りながら灯護に言った。
すぐにおろおろする。
とてつもなくわかりやすいやつだ。
「あぁ…いや…南瓜とか…好きだな…。」
さすがに灯護はおろおろされて困ったのか、小さく呟いた。
本当に好きなのか、適当に言っただけなのか、微妙なところだが…。
「あ、それじゃあ、南瓜の煮物でも作ってきますっ」
咲は嬉しそうに言う。
と、ほぼ同時。
灯護が胸を押さえて前かがみに俯いた。
「と、灯護さん？！大丈夫ですか！？」
慌てて咲は灯護の顔を覗き込んだ。
顔色が悪く、反応のない灯護に、咲は慌てて立ち上がった。
「まだ先生が近くにっ…！」
その瞬間だった。
咲は、灯護に服を引かれ、立ち止まった。






「灯護…さん…？」
「お前、誰だ？」
唐突に灯護は呟いた。
「え…？灯護さん…？何を…言ってるんですか…？」
突然の灯護の言動に、ただ咲は呆然とすることしかできなかった。
灯護はさっき胸を押さえたのが嘘のようにピンピンしている。
そして、咲を無理矢理布団に沈めた。
「お前、誰だ…？」








＊あとがき＊
＠山南
どもこんにちは。山南です。
・・・・とうとうトーゴさんが・・・（笑）
紅目大好きｖ三話目山南はがんばります（イロイロ）！！
ということで、お楽しみしてください〜♪ではまた！

＠相模
どうも、こんにちは、小説担当相模です。
第二話、いかがでしたでしょうか？？
いよいよちょっと話の本筋が見えてきそうな気配の焔ですが
まだまだ焦らしますんで（ぇ）お楽しみに。（笑）
本筋が確信に迫るのはもうちょい先かと思われます。（笑）
それまで、少々お待ちください。
今回も山南さんの美麗イラストに惚れながら見て下さっていると幸いです。
それではまた次回に。